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2015年6月 1日 (月)

第587号『大切にしたい会社飛ぶ~江守商事の悲劇』

「江守グループHDが民事再生を申請 負債総額711億円、上場廃止」

衝撃的なニュースが飛び込んできました。100年企業でもあり、第3回「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」で審査員特別賞を受賞した江守商事が経営破たんして倒産してしまいました。

残念としかいいようがありません。当通信では同社の調査研究を行ったことはありませんでしたが、福井県を代表する優良企業であるということは認識していました。いったい何が起きたのか、今回の悲劇を教訓として、今後の人を大切にするいい会社づくりに役立てなければならないと強く感じています。今回の事件を当通信ではスルーせずに向き合っていきたいと考えています。

江守商事は1906(明治39)年に「江守薬店」として創業。化学品、電子材料、情報機器などを幅広く扱い、現在の江守清隆社長(54)は4代目となります。中国を軸とする海外事業の拡大に乗り出し、10年3月期に659億円だった売上高を14年同期に2191億円へと、4年間で332%もの急拡大をして、14年4月からガバナンス強化を図るとして持ち株会社体制に移行していました。

倒産の前におよそ人本経営には似つかわしくない急成長があったのです。

4代目の現社長が経営を変質させてしまったのではないかという疑念を強く持ちます。

同社の社史によれば、「1992(平成4)年、幹男の長男である31歳の江守清隆(きよたか:第四代)が社長に就任した。」とあります。

その後、どんなことをしてきたのか振り返ってみましょう。

就任後まもない1994(平成6)年に江守商事は株式公開(現ジャスダック証券取引所)を果たしています。先代が非上場で経営を展開してきたことに比し、大きく変化をしたということがみてとれます。

その後、2005(平成17)年4月、江守商事は東京証券取引所第二部へ上場しています。そして2006(平成18)年3月、江守商事は、二部上場から1年足らずで東証一部指定を果たしました。4代目の株式市場に対する強い意識が感じられます。

この年を「ゼロから始める創業元年」と位置づけ、新たなスローガン『Mission With Passion(責任ある仕事を情熱を持ってやり抜く)』を掲げ、社是社訓も一新し、「新世紀憲章」を制定しています。その憲章には、江守商事の存在理由を「江守商事はお取引先・株主・社員・地域社会の幸福のために存在する」と明記されていました。

日本でいちばん大切にしたい会社大賞に表彰されるだけあって、「幸福」という言葉が社是には掲げられています。しかし、「株主」は「社員」の前に強調されています。

先代たちが営々と築いた「幸せ軸」から業績軸へと経営の質が変化したのではないか、という疑惑がさらに深まる出来事のように映ります。

倒産の引き金となった中国事業の失敗ですが、これも社史では「1996(平成8)年、江守商事は概に上海事務所やシンガポール支社を開設していたが、海外事業をさらに進めるため、上海江守貿易有限公司(中国)を設立。」と書かれています。清隆氏の指導のもと中国市場で急拡大を推し進めていったということになります。

ネット上に江守清隆氏のインタビュー記事がありました。

中国に盲目的にぞっこんで入れ込んでいるとしか思えない中国礼賛の内容でした。曰く「当社グループの9割の顧客が中国企業となりました。」なんというバランスの悪い経営体にしてしまったのでしょう。そして「今の日本は、昨年起きたことが今年同じように起きて、来年も同じでさらに10年たっても大きな変化はないと思っている。」と発言しています。人本主義に立脚して世の中を俯瞰していたら、今、様変わりしつつある日本をこのように形容することはあり得ません。完全な業績軸で発想する経営者だったのです。

234億円という巨額の債務超過が明らかになった本年3月の記者発表を伝える記事では、江守社長は「特定の中国企業に取引が偏ったことで業績悪化につながった。売り上げ至上主義の甘さがあった。反省している。」と語っています。この言葉がすべてを表しているでしょう。

109年の歴史に幕が閉ざされた5月31日、スポンサー企業に譲渡されていきました。社員491人の雇用が維持されることがせめてもの救いとなりました。

<江守商事関連のソース>

■江守グループHDが民事再生を申請 負債総額711億円、上場廃止
 http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/economics/70089.html

■<インタビュー>日中は一流品を創造するパートナー=江守グループ代表・江守清隆氏
 ・「当社グループの9割の顧客が中国企業となりました」
 ・「日本は10年経っても大きな変化はない」
 http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20140625/Xinhua_87027.html

■「粉飾決算、架空取引なかった」 江守グループホールディングス会見
 ・「売り上げ至上主義の甘さがあった」
  http://sokuhou.fukuishimbun.co.jp/news/2015050106.html
 

  
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