第408号『職場での幸せ4原則実践法』
およそ50年近く障がい者雇用を実践し続け、日本中に忘れかけていた大切な良心を取り戻すことに多大な貢献をされた日本理化学工業の大山泰弘会長。その大山会長が禅寺の住職との対話で人間の究極の幸せとは何かということを悟らされたと回想される逸話は感動的です。何度もミスをして叱られ、施設にいれば楽できるだろうに、それでも必死に働かせてほしいと懇願する知的障がい者の社員たちの心がわからないと告げた会長は住職にこう悟らされます。
人間の幸せは、モノやお金ではありません。
人間の究極の幸せは次の4つです。
人に愛されること
人にほめられること
人の役に立つこと
人から必要とされること
愛されること以外の3つの幸せは、働くことによって得られます。
障害を持つ人たちが働こうとするのは、本当の幸せを求める人間のあかしなのです。
振り返れば、自分自身が仕事にやりがいを感じるのはまさにその時だと大山会長は悟り、以後、障がい者が幸せを感じられるための職場として日本理化学工業を持続発展させていくことを目的として定め、今日に至ります。
会社の経営者は、社員がこの4つの幸せを具体的に実感してもらうためにどうしたらいいかということを考え、実践していくことが「良い会社」「大切にしたい会社」の仲間入りを実現させるための課題であるといえるでしょう。また、職場のリーダーや管理職、上司は、同様にメンバーが幸せの体感を極大化させていくことが最も重要なマネジメントテーマとなるといえるのです。では、どうすれば職場での幸せ4原則が実践できるのでしょうか。当通信ではこの答えを導き出すための挑戦をしてみたいと思います。
その一、必要とされている実感をつくる
仕事の場面で考えると、いきなり愛しているとか歯の浮いたほめ言葉を投げちぎっても滑稽な感じがしてしまいますので、まずメンバーが「必要とされている」という実感をもっているという状態をつくることからスタートしていくことが自然ではないかと考えます。
自分が必要とされているという実感がもてるためには何が必要なのか考えてみましょう。
□ やらされ感を徹底的に排除する
ただ指示されてやるだけの作業で仕事が終わっている限り、その仕事は誰かに代替可能であるから特に自分が必要とされている訳ではないという感覚になってしまうことでしょう。単純作業であっても、そこに意味が込められれば俄然イメージが変わってきます。例えばエフピコの障がい者の方がしているトレーの選別の仕事は単純作業ですが、機械にできない仕事であり、自分たちが選別しなければリサイクル事業が成り立たないという意識が一人ひとりに伝えられ、本人たちもそれを認識していますので、とても使命感を帯びた仕事になっています。そこに自分たちが関わっていることで、必要とされている度合いのボルテージはとてつもなく上がっています。
□ 期待がわかる
その仕事が会社にとってどれだけ大事であるかということを感じとってもらうために、メンバーとその仕事の意味を理解するための対話を十二分に行い、怠らずに説明していくことです。新たな仕事の指示をするときには、必ず全体の中のどういう意味のある仕事で、そのメンバーのどんな能力発揮を期待しているかということを落とし込んでおきます。
□ 必要な設備や道具がそろっている
意味のある仕事であることが理解でき、自分の力を発揮することで役に立つことが出来そうだ、と対話によりメンバーの理解を進めることが出来たら、その仕事を進めていくうえで与えられている、あるいは用意されている道具類が釣り合っているかということにも気を使っておかなければなりません。煉瓦職人に、煉瓦をただ積むだけの作業ではなく、将来そこに住む家族が団らんするための幸せづくりに貢献する仕事だと意味を語り、本人がその気になっても、セメントがいかにも粗悪なものであったり、パテがいかにも使い古したぼろであったりしたら、仕事に心が入りきる訳もありません。こうした細かな点にも配慮が行き届いて環境が整ったとき、人はやる気になり、100%を超える仕事をしていくことに他なりません。
必要とされている実感がもてるような配慮が進んでいくと、社員の表情が変わってくることでしょう。しかし、まだ「必要とされる」ということが感じられた段階です。幸せを得るためには、必要とされて仕事をした結果、確かに「役に立った」という実感がもてる次の段階へのマネジメントが必要になります。(以下次号)
いい会社に関する最新情報発信中
http://www.keieijinji.com/(経営人事ドットコム)
| 固定リンク
「新SVC通信」カテゴリの記事
- 新SVC通信は今後、新サイトで配信していきます。(2017.10.30)
- 第707号『世の中変わった~脱・売上至上主義に成功した「沖縄ヤクルト」』(2017.10.23)
- 第706号『脱「働き方改革」』(2017.10.16)
- 第705号『内部留保に課税?!希望の党公約に物申す』(2017.10.10)
- 第704号『日本・平成世代 米国・ミレニアル世代』(2017.10.02)
最近のコメント